2023/4/22(土)に開催される、「AIライティング(ChatGPT)vsプロ編集者」のイベントレポートをお送りします。
イベント概要
考え得る限り最も精度の高い記事が生成されるであろうプロンプト(指示文)をChatGPTに読み込ませ、その記事を人の手で添削しながら、AIライティングの未来について検討してみました。
以下はイベントでお伝えする内容のまとめになります。
メインプレゼンターのプロフィール
AI時代の次世代型ライティング講座「ビジネスライティングスクール(BWS)」主催。
慶應義塾大学卒業後、創業直後の経営コンサルティング会社、広告代理店を経て、コンテンツを中心としたデジタルマーケティングの支援を行う株式会社LTVマーケティングを設立。
また2022年より、情報経営イノベーション専門職大学の客員教授として、起業を目指す学生向けの「ライティング研究室」も開講。
事業として「人を動かす」ことに携わってきた中、文章スキルを鍛えることがキャリアを豊かにすることに気づき、BWSの考え方の普及を行っている。
AIライティングツール「ChatGPT」についておさらい
AIライティングについて詳しくご存知ない方のために、まずは代表的なツール「ChatGPT(チャットジーピーティー)」について、かんたんに触れておきます。
・OpenAI社が開発した、自然言語処理技術である
・インターネット上の大量のテキストデータから言語パターンを学習し、それをもとに人工知能を構築している
・学習内容に基づいてユーザーの入力文を理解し、適切な返答を生成できる
・新しい情報が入力されるたびに、その情報をもとにモデルがアップデートされていく
たとえば、「ChatGPTはどのように活用できそうですか」と聞くと、以下のように返答されます。
ChatGPTは、以下のようなことに活用することができます。
- カスタマーサポート:ChatGPTを利用して、自動応答システムを作成することができます。このシステムを利用することで、顧客からの問い合わせに即座に返答することができます。
- 情報提供サービス:ChatGPTを利用して、様々なトピックに関する情報提供サービスを提供することができます。例えば、天気予報やニュース、地域情報などです。
- プロダクトの推薦システム:ChatGPTを利用して、顧客の好みに合わせたプロダクトの推薦システムを作成することができます。このシステムを利用することで、顧客にとって最適な商品を提供することができます。
- 教育サポート:ChatGPTを利用して、生徒や学生の質問に対する回答を提供することができます。また、教師が授業の質問に対して即座に回答することもできます。
- チャットボット:ChatGPTを利用して、ウェブサイトやアプリケーションに組み込まれたチャットボットを作成することができます。このチャットボットを利用することで、顧客とのコミュニケーションを自動化することができます。
見やすく構造化された、わかりやすい文章が返ってきました。
このように、ChatGPTに質問するだけで、わざわざ検索して大量の情報を理解するまでもなく、文章による直接的な課題解決ができる可能性があるのです。
ちなみに、ChatGPTはMicrosoftの系列ですが、同様のツールとしてGoogle系列の「Bard(バード)」などがあります。
AIライティング「ChatGPT」を使って本気で文章を書いてみた
今回は、「とあるキーワード検索をした際に、Googleで上位表示されるような記事を書く」ことを目指し、以下の3つの方法から文章を比較してみました。
方法1:ざっくりした指示で記事をChatGPTに書いてもらう
方法2:詳細な指示で記事をChatGPTに書いてもらう
方法3:プロが書くならどのように進めるか、ChatGPTの工程をレビューしながら改善する
指示の粒度はどれくらいがベストなのか。人間が手を入れなくてもそのまま出して問題ない仕上がりになるのか…。
こちらは別途記事にするかもしれませんが、現時点では「イベント参加者さんのみに共有する内容」とさせていただきます。
以下では、今回の検証を踏まえて改めて考察されたことをまとめます。
AIライティング「ChatGPT」の得意分野を4つ紹介
ChatGPTについてはTwitterなどを見ると、様々な方が実験し、実験結果を共有しています。
例に漏れず私も色々試してみた中で、現時点のChatGPTが得意分野だといえることを4つ洗い出してみました。
(「現時点の」という修飾語をつけているのは、これから学習が進む中で、変化が起こる可能性も0ではないからです)
以下の得意分野については少なくとも、ビジネス活用ができる部分ではないかと考えています。
①:文法的に正確な返答をすることができる
②:情報収集(インプット)が効率化できる
③:情報出力(アウトプット)が効率化できる
④:使えば使うほど、ユーザーに合わせてパーソナライズできる
1つずつ、解説します。
①:文法的に正確な返答をすることができる
上に貼り付けた返答例でわかるように、AIライティングの返答は文法的に整理されており、正しくわかりやすい記述になっています。
そのため、「文章が正しくわかりやすい状態」をゴールとする校正の仕事に向いていると言えます。
もちろん、プロの校正担当から見ると100点とは言い難いですが、特に文章を生業としているわけではない方が、少なくとも75点くらいの土台を素早くつくることには適しています。
また、日本語を正しい文法の外国語に言い換えることもできます。
したがって、言葉が通じない外国の方とのコミュニケーションにも、これから使われる可能性があります。
②:情報収集(インプット)が効率化できる
AIライティングは、すでにある知識をきれいにするだけでなく、新しい知識を得るための情報収集(インプット)活動にも長けています。
通常、人間がインプットを行う場合は以下の工程1~4を行いますが、AIに任せると、工程1を聞いた次の瞬間に工程4を踏まえた文章を生み出すことができます。
工程1:インプットしたい内容を言語化する
工程2:言語化した内容を検索する
工程3:検索結果をもとに情報を理解する
工程4:理解した情報を自分に合うように整理する
そのため、特に「専門知識や自分の中での前例がない分野における」情報収集や手順の明確化に向いているといえます。
③:情報出力(アウトプット)が効率化できる
AIライティングは、集めた情報をブラッシュアップして、出力することの効率化もできます。
たとえば、以下のような指示文がよく使われます。
・2,000文字以内でまとめてください(情報の集約)
・10個の案を出してください(情報の発散)
・具体例や体験談を用いて解説してください(情報の具体化)
・他に考えられることはありますか(情報の多角化)
・テーブル形式で出力してください(情報の視覚化)
・この主張をしたときに、考えられる反論はありますか(情報の批判)
情報を文章にまとめる際、初稿を書き上げたあとに、あらゆる角度からブラッシュアップができないか検討します。
それが、ChatGPTに聞くことでブラッシュアップに必要な返答を素早く得ることができます。
そのため、SNSやブログなど、一定分量が必要となるコンテンツの生成に向いているといえます。
また、マークダウン形式やテーブル形式、プログラミングのコード形式などの出力にも対応しており、文章だけでなく視覚的にまとめることも可能です。
④:使えば使うほど、ユーザーに合わせてパーソナライズできる
ここまで説明すると、何でもできるように錯覚してしまいがちですが、もちろんAIは全知全能の神ではありません。
あくまで学習を前提とするツールであり、何も学習していない状態では、統計的に確からしい回答をすることが一般的です。
一方で、継続的に学習を進めることで、あなたにパーソナライズされた情報が出てくる可能性が高くなります。
最もイメージしやすいのはYouTubeやTikTokでしょう。
「YouTubeやTikTokを見ていると、いつも自分が関心を持ちそうなチャンネルや動画がおすすめされてくるなぁ」と感じたことはありませんか?
YouTubeやTikTokは、あなたの検索キーワードや視聴履歴を参考に、AIがあなたが好きそうなジャンルを推測し、おすすめ欄で当てにいっているのです。
そして、「動画を開いた」「開かなかった」「たくさん見た」「すぐに閉じた」などの行動から推測をブラッシュアップし、新たな動画を当てにいきます。
こうして、あなたが関心を持ちそうな動画ばかりがおすすめされるタイムラインができあがるのです。
将来的にはAIに仮想人格を持たせ、あなたがコミュニケーションしやすいキャラクターの口調で問題解決をしてくれる…なんてこともあるかもしれませんね。
AIライティング「ChatGPT」の限界について3つ紹介
ここまでAIライティングの得意分野を紹介してきましたが、一方で苦手分野・限界ももちろん存在します。
以下では現時点での苦手分野・限界について3つまとめます。
①:出力内容は学習データや指示文の質に依存してしまう
②:言葉のニュアンスを汲み取ることができず、表面的な理解になってしまう
③:人間の感情に寄り添ったやり取りが難しい
1つずつ、解説します。
①:出力内容は学習データや指示文(プロンプト)の質に依存してしまう
AIがインターネット上にある言語を学習するツールである以上、学習元となるデータが偏っていれば当然、出力内容も偏ってしまいます。
そのため、出力した内容が正しいかどうか、最新のものかどうかは、人がチェックする必要があります。
日々進歩が続いている最新のインターネット技術や医学などの専門知識、国ごとの制度などの鮮度の高い情報を正しくまとめることには、あまり適さないと考えてよいでしょう。
同様に、指示文(プロンプト)の精度も出力内容に影響を与えます。
AIは、ざっくりした質問に対して、ざっくりしている部分を適宜補完しながら回答を生成します。結果、AIが持ってきた回答と、指示ユーザーが意図している内容がずれることがあります。
意図に限りなく近い回答を生成するためには、内容が100%近く伝わるような、明快で具体的な指示を出す必要があります。
結局は言語化の力に長けていないと、質の高い情報が得られないというのも、AIの限界になります。
②:言葉のニュアンスを汲み取ることができず、表面的な理解になってしまう
AIには、人間特有のニュアンスを汲み取る力がないため、文章を文章のまま理解してしまうところに限界があります。
たとえば、京都弁で「早く帰ってください」を意味する「ぶぶ漬けでもどうどすか」という表現があります。
これをChatGPTに読み込ませると、
「正確な文脈がないため、質問が何を意味しているのか理解できません。もし質問の背景や詳細についてお知らせいただければ、より正確な回答を提供することができます。」
と返ってきたり、
「ぶぶ漬けをつくるための手順について回答します」
と、ニュアンスとは少しずれた回答になったりします。
そのため、雰囲気で察してもらうようなコミュニケーションはできるだけ避け、暗黙の了解も含めて1から100まで伝えてあげるつもりで文章を書く必要があります。
③:人間の感情に寄り添ったやり取りが難しい
人間は感情の生き物なので、感情に寄り添ったコミュニケーションをしないと、行動を起こさないケースも少なくないです。
しかし、どのような人が、どのようなシチュエーションで、どう感じるのかまで踏まえたコミュニケーションは、AIにはまだ難しいです。
(なんなら人間でも難しいですよね…)
そのため、読者の感情移入や購買行動を促すような文章においては、最後の一歩で人によるチューニングが必要になるといえます。
ただし、これから人の属性と言葉と感情の因果関係について学習が進めむことによって、可能になることも増えていくでしょう。
たとえば、ChatGPTがAIカメラと連動して人相を読み取り、悲しそうであれば「何か辛いことでもあったのですか」と投げかけてくれるような技術がこれから生まれることは想像できるでしょう。
おまけ:実際に文章を生成して起こったおもしろ間違い事件
ChatGPTは「いかにも正しそう」な内容を返してくるので、特に専門外の知識については精査が必要です。
実際に活用しようとして、まったく当てにならなかった事例を紹介します。
事例1.ポケモン知ったかぶり事件
私:ポケモンクイズを出してください。
—以下、ChatGPT
いいですね!では、以下のポケモンクイズに挑戦してみてください。
- 「でんき」タイプのポケモンで、赤い頬と長い尾を持つ、ねずみポケモンは何でしょう?
- 「みず」タイプの伝説のポケモンで、尾の先にむしったを持つ、オレンジ色の恐竜のような姿をしたポケモンは何でしょう?
- 「くさ」タイプのポケモンで、大きな葉っぱを背中に持ち、四つん這いで歩く、亀のようなポケモンは何でしょう?
…
いかがでしょうか?正解は以下の通りです。
- ピカチュウ
- ガブリアス
- ゼニガメ
…
1は誰もがピカチュウと答えるでしょう。
2はまったくの間違いです。ガブリアスは伝説のポケモンでもなければ「みず」タイプのポケモンでもなく、なんならオレンジ色は差し色で、全体は青色ベースのポケモンです。
3に至っては、「亀のようなポケモン」という部分以外、合致する要素がありません。
もしChatGPTで最初に「ポケモンクイズ」をやっていたら、まったくあてにならないツールの烙印を押してしまっていたでしょう。
ちなみに、この後に答えを訂正して再度回答を出してもらったのですが、「ヒモンチャ」という存在しないポケモンを生み出してきました。ChatGPTは未来からの使者なのかもしれません。
事例2.経歴詐称事件
私:
以下のURL内容を読み込んで、「◯◯医師」の経歴を400文字以内の紹介文としてまとめてください。
URL1
URL2
URL3—以下、ChatGPT
△△大学医学部卒業後、~…
個人情報なので詳細には書けないのですが、冒頭の△△大学からいきなり間違えていました。
冒頭が間違っていたため、結局すべての文章をファクトチェックすることになり、「自分で書いたほうが早い…」となってしまいました。
後で気がついたのですが、参考URLが1年以上前のものだったりすると、年齢をそのまま書き写してしまうのではないかという懸念もあります。
1年間隔で変わりゆくものよりも、2年以上経っても変わらないような情報を集めるほうが、今のところは無難なようです。
ChatGPTとうまく付き合うために知っておいてほしい4つのこと
ここまでChatGPTの得意分野と苦手分野・限界についてお伝えしました。
これらの情報や実際に使ってみた所感を踏まえて、ChatGPTとどのように付き合えばうまくいくのか、心構えのようなものを4つまとめてみました。
①:日本語版のプログラミングツールと理解する
②:知性がある人間の部下のように扱う
③:意識的に指示を「狭める」
④:出力は手順を細かくわけて、少しずつ行う
1つずつ、解説します。
①:日本語版のプログラミングツールと理解する
ChatGPTは自分の得意な言語で書ける、プログラミングツールだと思ってください。
・プログラミングは、指示していないことはやりません。
・プログラミングは、指示内容が少しでもずれると、意図していない方向に動き始めます。
・プログラミングは、複雑すぎる処理をさせようとすると、どこかでエラーが起きがちです。
そのため、
・指示は「詳細に」「鮮明に」「誰でもイメージが湧くように」伝える
・指示内容はできるだけ単純に、手順ごとに切り分けて伝える
といった工夫をしながら、意図に近い回答が出るように試行錯誤しましょう。
②:知性がある人間の部下のように扱う
プログラミングツールだと言った直後に「人間の部下のように」とはどういうことだ…と思われるかもしれません。
これはあくまで主観になりますが、雑な扱いをすると返答も雑になり、丁寧な扱いをすると返答も丁寧になるという言及が、少なくない数挙がっています。
実際に私も使ってみましたが、感覚的には丁寧口調の指示のほうが返答の質が上がっているように感じます。
命令口調のような攻撃的なニュアンスを含む内容を「知性のない指示者」だと認識し、それなりの対応をとっている可能性もあるのでは…と考察されています。
機械とはいえ人間がインプットしている以上、人間のように扱うことがポテンシャルを引き出すコツだと考えてよさそうです。
③:意識的に指示を「狭める」
ChatGPTは「わからない(曖昧だ)から止まる」ということがありません。
曖昧なりに、統計的に正しそうなデータを拾い、文章を補完して出力してきます。
しかし、曖昧な部分の補完をすべてAIに任せてしまうと、少しずつイメージから離れていきます。
たとえば、指示に対して曖昧な要素が4つあったとき、4つすべてが100点満点で90点の内容だったとしても、「90%×90%×90%×90%≒65.6%」となり、理想からは遠くなってしまいます。
だからこそ、面倒かもしれませんが、ChatGPTが曖昧だと認識する内容がなくなるように指示を「狭める」ことが大切です。
前提条件や制約条件を示しつつ、誰が聞いてもわかる言葉で、シンプルな指示を心がけましょう。
④:出力は手順を細かくわけて、少しずつ行う
ChatGPTは「◯◯についての文章を書いて」と指示すると、文章を最初から最後まで一気に書き上げようとするため、注意が必要です。
なぜかというと、途中で少しでも方向がずれた場合、ずれたままの状態で書ききってしまうからです。
たとえば、「◯◯についての記事を書いてください。ただし、私はライティングスクールの主催者で、この記事のゴールはライティングスクールに興味がある人を誘致することです」と指示したとします。
このとき、私の頭の中では「まずは◯◯について、読者の課題をしっかり解決しきってから、最後の最後でライティングスクールの話をしよう」と考えています。
ところがChatGPTは、◯◯についての言及は見出し2つ分くらいで終了し、残りの見出し5つ分くらいをすべてライティングについて言及する流れにしてしまいました。
結局、指示内容を変えて書き直しです。
このような失敗を防ぐには、やることをできるだけ細かい作業にわけて、1つの作業ごとに出力と改善を繰り返すことが大切です。
ChatGPTを使って記事を書き上げたいのであれば、以下のような手順で出力を行うと、イメージに近い仕上がりになります。
①:前提条件をインプットさせる
②:(読み込ませる情報を指定する)
③:記事の構成を書いてもらう
④:記事の構成を修正してもらう
⑤:記事の構成のうち、1つ目だけを文章化してもらう
⑥:文章化したものを修正してもらう
⑦:記事の構成のうち、1つ目だけを文章化してもらう
…以下、終わるまで繰り返し
⑧:文章全体のファクトチェックや具体例の追加など、人間の感性で仕上げを行う
また、リアルな仕様の話になりますが、ChatGPTは出力する文字数ないし行数に制限があり、規定の分量をオーバーすると、途中で出力が止まってしまいます。
そのため、小分けに出力させておいたほうが、中途半端なところで止まらずに済むというメリットもあります。
ChatGPTの超具体的な4つの使い方~指示出し編
これまでは、ChatGPTを使いこなすための心構えのお話をしてきましたが、実際にどのように使いこなすのか、イメージが湧かない方もいらっしゃると思います。
そこで、精度の高い出力結果を得るための、超具体的な使い方をお伝えします。
①:「6W1H1G」を明確にして指示出しする
②:例示する
③:曖昧な部分を明確にすることから手伝ってもらう
④:追加情報を与える
【用語解説】プロンプトとは
ChatGPTを利用する上で「プロンプト」という言葉をよく耳にします。
プロンプトとは、「入力を促すマーク」のことです。ChatGPTへの指示文と認識しておいても問題ないです。
精度の高い出力結果を得るには、プロンプトの精度を上げることが重要です。
このプロンプトの精度を上げる工夫は「プロンプトエンジニアリング」と、あたかも高尚な技術のように呼ばれていますが、「いい感じの出力になるように、いい感じにプロンプトをいじる」ことと認識して問題ないです。
以後、ChatGPTに指示する内容を「プロンプト」と表現しながら解説を進めます。
①:「6W1H1G」を明確にして指示出しする
私が新卒で経営コンサルティングの会社に就職したとき、指示を具体的にする方法として骨の髄までしみつくほど暗唱させられたのが、「7W2H1G」です。「5W1H」の発展版ですね。
【Why】:なぜ、なんのため(目的)
【Goal】:どの状態へ(ゴール)
【When】:いついつまでに(納期)
【Where】:どこで(場所・媒体)
【Who】:誰が(立場/属性)
【Whom】:誰に対して(ターゲット)
【What】:何を(内容)
【Which】:どちらから(優先順位)
【How】:どのように(手段)
【How long】:どれくらいかけて(工数)
ただし、ChatGPTに指示した場合、即時に回答が返ってくるため、「When」と「How long」は実際に必要にはなりません。
そのため、残った「6W1H1G」を明確にすることが、ChatGPTの精度を上げるポイントとなります。
もちろん、すべてを1つ1つ丁寧に指示しなければいけないわけではありませんし、指示の段階では明確になっていないことがある場合は省力しても問題ありません。
重要なのは、「6W1H1G」にわけて指示すると、精度が向上する可能性があるよ、という視点を持つことです。
②:例示する
これも経営コンサルティング会社の受け売りですが、指示出しや指示受けをする場合は、「詳細に」「鮮明に」「イメージ映像が流れるように」という教えがありました。
しかし、いくら言葉で説明してもイメージがわかないことは、誰にだってありますよね。
そんなときに使えるのが「例示」。つまり、たとえを示すことです。
以下は、実際に使ったプロンプトの一部です。「こんな出力例に則って実行してください」と指示することで、「こんな出力例」と同じように回答してくれています。
▼プロンプトの一部
では、以下の出力例に則って[これから進めること]を実行してください【変数】
変数1:名称
変数2:名称
…
変数n:名称【手順】
P1:内容
P2:内容
…
Pn:内容以上が出力例です。
ーーー
▼実際に出力された内容【変数】
変数1:キーワード
変数2:ブログ記事のタイトル
変数3:Google検索での上位表示の条件
変数4:記事の本文の内容
変数5:読者のニーズや興味関心【手順】
P1:キーワード「コンテンツマーケティング とは」について、ニーズや興味関心を調査する。
P2:調査結果をもとに、ブログ記事のタイトルを決める。
P3:Google検索で上位表示される条件を調査し、記事の本文をその条件に合わせて作成する。
P4:記事の本文中に変数5で把握したニーズや興味関心に応える情報を盛り込む。
P5:記事を公開し、SNS等で情報発信を行う。
出力の形式や内容が自分のイメージと違う場合は、例示してあげることでギャップを埋めることができます。
他にも
・マークダウン形式で(読みやすく)
・3カラム以上のテーブル形式で(視認しやすく)
・ドラえもんのジャイアンになりきったつもりで
など使える表現がたくさんあるので、チャレンジしてみてください。
③:曖昧な部分を明確にすることから手伝ってもらう
経営コンサルティング会社の仕事の仕方の鉄則として、ゴールを明確にしたら、可能な限り細かい手順に分解してから取り掛かるというものがありました。
しかし、特に初めて行うことの場合、どのような手順に分解できるかイメージがつかないですし、なんならゴールも明確でない可能性までありますよね。
そういう場合は、ゴールを明確にしてタスクを細かく分解するところから、ChatGPTにお願いしてみましょう。
巷では「ゴールシークプロンプト」と呼ばれていたりしますが、そんな高尚な考え方ではなく、きちんと仕事をする人であれば、誰もが意識しているものです。
(とはいえ、記述方法についてはいろんな方のものを参考にさせていただいております)
▼プロンプト例
私はあなたにあるタスクを遂行してもらいます。
ただ、私はゴールとタスクの手順をまだ完全に言語化できていません。まず、以下の方法でゴールと手順を言語化してください。
・私からあなたに曖昧なゴールを伝えます。
・あなたはそのゴールをもとに、実行手順を段階的に出力します。
・次に、確定的なゴールを推論し出力します。
・確定的なゴールと手順を定めるうえで必要な情報は変数を使って補完します。ここまで理解できたら「OKでやんす」と回答してください。
↓
▼次のプロンプト例
では、以下の情報をインプットしてください。[曖昧なゴール]
「コンテンツマーケティング とは」というキーワードでブログ記事を書いてください。[これから進めること]
1.曖昧なゴールを達成するために必要なことを段階的に1つづつ実行していけるように手順:[P#]に分解して下さい。#には1からの通し番号が入ります。
2.分解した手順をもとにゴールを再定義してください。これを[確定的なゴール]と呼びます。
3.[確定的なゴール]と手順について、変数を用いて一般化した形で再定義してください。
4.変数と確定的なゴールと手順を書き出してください。出力時の体裁は以下のようにしてください。ここまで理解できたら「OKでござる」と回答してください。
その後、以下の出力例に則って[これから進めること]を実行してください
【変数】
変数1:名称
変数2:名称
…
変数n:名称【ゴール】
[確定的なゴール]の内容
【手順】
P1:内容
P2:内容
…
Pn:内容以上が出力例です。
▼ChatGPTの解答例
【変数】変数1:キーワード
変数2:ブログ記事のタイトル
変数3:Google検索での上位表示の条件
変数4:記事の本文の内容
変数5:読者のニーズや興味関心【ゴール】
「コンテンツマーケティング とは」というキーワードでGoogle検索で上位表示するブログ記事を作成する。
【手順】
P1:キーワード「コンテンツマーケティング とは」について、ニーズや興味関心を調査する。
P2:調査結果をもとに、ブログ記事のタイトルを決める。
P3:Google検索で上位表示される条件を調査し、記事の本文をその条件に合わせて作成する。
P4:記事の本文中に変数5で把握したニーズや興味関心に応える情報を盛り込む。
P5:記事を公開し、SNS等で情報発信を行う。【変数を用いた再定義】
【ゴール】
「変数1」というキーワードで「変数3」という条件を満たす「変数2」というタイトルのブログ記事を作成する。その記事には、「変数5」という読者のニーズや興味関心に合わせた情報を「変数4」という内容で盛り込む。
【手順】
P1:「変数1」について、ニーズや興味関心を調査する。
P2:調査結果をもとに、「変数2」というタイトルを決める。
P3:「変数1」で「変数3」という条件を満たすためのGoogle検索で上位表示される条件を調査し、記事の本文をその条件に合わせて作成する。
P4:記事の本文中に「変数5」に応える情報を「変数4」という内容で盛り込む。
P5:記事を公開し、SNS等で情報発信を行う。
本当は、「タイトルを決める前に記事の構成を示して欲しい」とか、「ニーズや興味関心は記事の構成の時点で盛り込んでおいて欲しい」とか、色々とツッコミどころはあります。。。
ただ、専門外の分野で70点くらいの情報を即時に生成してくれるという点では、十分な仕事をしているといえます。
あとは、分解してもらった手順に従って、ChatGPTに作業を指示していくだけです。
どのように指示すればよいかすら曖昧である場合は、以上のように指示する内容からChatGPTにお願いする方法を試してみましょう。
④:追加情報を与える
どんなに細かいプロンプトを書いたつもりであっても、抜けは発生します。
また、出力された内容を見て、初めて気づく点などもあると思います。
人間同士でやり取りをしているときも、「会話からヒントを得て発想が広がった!」という経験、あるのではないでしょうか。
もちろん、一発のプロンプトで理想の内容を仕上げることができるのがベストではありますが、現実ではそうもいきません。
だからこそ、仕上がった内容を確認して、追加情報を与えながら軌道修正していくことが大事になります。
・◯◯の観点で書き直してください
・読者は△△な属性だと想定して書き直してください
・■■の見出しについて、具体例や経験談を盛り込んで書き直してください
このような形で追加情報を与えることで、出力結果の精度が上がります。
ただし、どんなに精度を上げたつもりでも、最後には人の手で調整をしないと本当に役に立つ記事にはならないと心得ておきましょう。
私の感覚としては、トピックにもよりますが、75点~80点がAIライティングの限界だと考えています。
AI時代のライターの未来とは
これまでChatGPTの具体的な使い方を中心にお伝えしてきましたが、最後にAIでライティングができるようになった現在、ライターの未来はどのようなものになるのかについて記載し、締めとさせていただければと思います。
ちなみに、ChatGPTにこのトピックを聞いたときの内容も記事にしておりますので、ご興味あればご覧ください。
【短期的な展望】言語化力によって品質が二極化する
ChatGPTの登場は、言語化する力の格差を埋めるどころか、むしろ二極化させると思っています。
なぜなら、プロンプトの言語化力によって、出力内容が大きく変わるから。
そして、一次情報や感性に訴えかけるような人にしか担えない部分が、コンテンツとしての差別化になるからです。
プロンプトの言語化力が低く、人にしか担えない部分を省略してしまっている場合、小綺麗にまとまった、抽象的で、無難で、本当かウソかもはっきりわからない文章があふれかえるようになるでしょう。
そんな文章は必ずバレます。
たとえ言語化の作業をAIが担うようになったとしても、出力結果を判断し、編集する人間の言語化力は、引き続き鍛える必要があるでしょう。
ただし、クラウドソーシングで低単価で募集されているような、誰が書いても変わらないようなコンテンツの大量生産については、AIに取って代わられる可能性が高いです。
【中期的な展望】AIがあらゆる外部の媒体と接続し、気を利かせはじめる
AIはすでに、人間の表情などの対象をパターン分析し、悲しそうな場合は「悲しい」。うれしそうな場合は「うれしい」。と判断する技術を有しています。
こういった外部の媒体と連動し、あたかも感情に配慮しているかのような出力結果を得ることは、比較的近い未来に考えられます。
感情への配慮までが実装されると、もはや人が書いたものとAIが書いたものの区別がつきにくくなると予想されます。
ただし、「つきにくく」なるだけで、実際の人間はもっと繊細な生き物です。
移りゆく人間の心情を捉えることは、引き続き難しいのではないかと考えています。
この時代に人間に求められるのは「企画力」「編集力」です。いかにAIっぽくない面白さを提供できるかが、価値あるコンテンツをつくるための分岐点となってくるでしょう。
AIでは対応できない「あなただけの魅力」を追求し、価値あるコンテンツを生み出そう
ライティングやマーケティングに携わっている者の所感として、改めて考えさせられていることがあります。
それは、これからのWebライティングでは、似たようなきれいな文章を大量生成する能力よりも、文章を必要としている人と向き合い、その人が読むことで内容が自然と入ってくるような、心地よいニュアンスの文章を書き分けられる人が求められるということです。
AIライティング時代のライターはマーケターにならなければいけない。そして、マーケターは需要に対して供給が圧倒的に不足している市場でもあります。
そこで我々は、AIライティング時代の「Webライター2.0」を輩出すべく、ライティングスクールを開講することにしました。その名も「ビジネスライティングスクール」といいます。
書くことを通じてマーケティング力をつけ、収益を生み、起業に至ったプロセスを体系的にまとめ、「好きなこと、好きなものを表現し、いいコンテンツを生み出せる人」を増やしていきたいと考えています。
スクールにご興味がある方はもちろん、スクールと提携してあんなことやこんなことを実現したいという法人の方もいらっしゃいましたら、ぜひこちらのホームページまでご連絡ください。
この文章をお読みいただいたあなたが、AIライティングとともに、全世界を誠実で質の高いコンテンツで埋め尽くせるよう、邁進できるきっかけとなれましたら幸いです。