この記事にたどり着いたあなたであれば、「CMO」という言葉には聞き覚えがあるのではないでしょうか。

CMOとはChief Marketing Officer(=最高マーケティング責任者)を指す言葉です。

最近のスタートアップやインターネット系の企業では、ボードメンバーにCMOがいるのが当たり前になってきましたし、CMOのレベルがベンチャーキャピタルの投資判断に大きな影響を及ぼすとも言われています。

一方で、「CMOの役割ってどこまでを指すの?」「COOとは何が違うの?」「CEOやCOOが兼務するものではないの?」などの疑問をよく聞くのも事実です。

まだまだCMOの定義については曖昧で、CMO人材の役割や適性については一般化していないように見受けられます。

アメリカのフォーチュン500の企業の62%にはCMOがいるのに、日本の時価総額トップ300でCMOがいるのは0.3%というデータもありますし…。

本記事では、「レンタルCMO」というサービスを通して一人法人から数百億円規模の企業のお手伝いをさせていただいている我々(=株式会社LTVマーケティング)の視点で、「CMO」について紐解いていきます。

※国際的な定義などは一旦無視して経験則による独自の見解を記載しますので、「こういう見方もあるよ」というところがございましたらぜひ教えてください!

代表:岸川

<プロフィール>
新卒で経営コンサルタントとして、中期経営計画策定、新規事業推進、全社生産性向上などのプロジェクトを実施。その後、成功報酬制インターネット広告代理店でWEB広告まわりの新規事業立ち上げ、商品開発、広告運用に従事する傍ら、自身でアフィリエイト(SEO)の収益化も実施。現在は独立。企業の「レンタルCMO」として、マーケティングを合格点に持っていくためのソリューションを提供。

CMOという役割が必要になったのは、顧客がワガママになったから

CMOはマーケティングの最高責任者として、経営KPIを達成するために企業戦略を細分化し、特にマーケティングの戦略・施策を統括する役職です。

インターネットの普及によって、今まで顧客に見えなかった選択肢が見えてくるようになった昨今、顧客は「本当に自分に合ったモノ」を妥協なく探すようになりました。早い話がワガママになったということですね。

そうなると、「みんなにとって良さそう」な当たり障りのない商品は響かなくなってしまいます。顧客が欲しいのは「あなたにとって良い唯一無二の」商品だからです。

そこで、マーケティングの出番です。マーケティングを平たく言うと、

自社の商品はどんな顧客の課題解決ができるのかを特定し、近しい課題を持つ顧客群「だけ」に最短最速で情報を届けるための仕組みづくりです。

マーケティング戦略をうまく組み立てることは、最小限の費用で必要な人にだけ届けるということを実現する、企業にとっても顧客にとってもWIN-WINの行為なんですね。

特にデジタルマーケティングは顧客の住んでいる地域などの属性情報で絞って配信するため費用対効果が高く、施策の中枢をデジタルに置く企業も増えています。

だから、近年ではマーケティング職の募集が活発になったり、マーケティングの最高責任者であるCMOという役職が重要視されてきているのです。

CMOに求められる3資質を持つ人材が圧倒的に不足している

では、自社にCMOを置きましょう!…と言って人材を探してみても、ほとんど見つからないというのが現状です。

もっと言うと、CMOの管理下で施策を実行するマーケティング人材ですら、採用困難な状況が続いています。
(実際、まわりの経営者も軒並みマーケティング人材の採用に困っています…)

では、なぜCMOの資質を持つ人材が市場にいないのでしょうか。

CMOに必要な要素を分解すると、大まかに以下の3つに分かれると考えています。

CMOに必要な3資質

①:経営者としての全体最適視点
②:マーケティング戦略内での全体最適視点
③:マーケティング施策ごとの個別最適視点

結論、
②や③(現場)の視点は持ち合わせていても、①(経営)が見えない
①(経営)の視点は持ち合わせていても、③(現場)をよく知らない
③(現場)の中でも施策が多すぎて施策のほぼすべてに精通している人はほぼいない

…ということが起こっているからです。

また、この3資質を持っていれば1人でも事業が回せるため、既に経営者やフリーランスとして活動していたり、オファーが殺到してすぐにリファラルで引き抜かれてしまうという背景もあります。

とはいえ上記3資質は具体的にどんなことができればよいのかイメージしづらいと思うので、以下では①~③の順にかんたんに解説いたします。

※マーケターの能力に関しては、別記事の「マーケター分類表」もぜひご参照ください。

CMOに求められる役割①:経営者としての全体最適視点

経営者としての全体最適視点とは、経営全体の中でどのようにマーケティングのパフォーマンスを最大化できるかを考え、場合によってはマーケティング以外の領域にも踏み込んでいけることです。

例えば、マーケティングの指標の中に「CPA(1反響あたりのコスト)」という考え方があります。

マーケティングセクションだけで成功しようと思うと、このCPAを一定レベルに保ちながら、反響数を最大化していくことに注力することになります。

しかし、経営視点で考えると以下2つのパターンのような、マーケティングにとどまらない判断が必要なケースもあります。

パターンA

CPAは安く済むかもしれないが、肝心の成約率が上がらず、確度が低い顧客への対応で営業が疲弊している

パターンB

今はシーズン前で露出機会を意図的に増やしたいので、CPAが合わなくても予算を一気にかけて認知と反響数を取りに行くフェーズだ

パターンAの場合は営業にヒアリングして、成約率が上がらない理由が営業力の問題なのか、マーケティング施策の問題なのかを特定しにかかる必要がありますし、パターンBの場合は考えうる経営インパクトやリスクを洗い出し、CEOや株主を説得する必要があります。

いずれにせよ、マーケティングだけでなく経営全体が見えていないと難しい芸当です。

代表:岸川

経験則上、企業の経営者や役員レベル、または経営コンサルタントを経験していると、この資質を持ち合わせている可能性が高いです。

CMOに求められる役割②:マーケティング戦略内での全体最適視点

経営KPIは分解されて大まかな方向性が決まり、マーケティングの前後工程も整いました。

次にマーケティングについて考え決めるべきことは、以下4つです。

「何の施策を」
「どの優先順位で」
「どれくらいのコストや期間をかけて」
「どれくらいを成果目標とするか」

マーケティング施策と言っても、SEO、インターネット広告、SNS…など挙げていくとキリがありません。

しかも、どの施策が合うかはその企業が位置している業態にもよりますし、まったく同じ業態業種でも理念や業務フローによって違う施策を取った方が良いケースもあります。

CMOは、「人・モノ・カネ」というリソースとこういった自社の状況を考え、適切な配分を考えなければなりません。

もしできないとどうなるか。

広告業界は専門性が強いため、「SEO屋」「広告屋」「SNS屋」など領域ごとに会社が存在しており、これらの会社は自社の受注のためにポジショントークをする傾向があります。

また、「SEOも広告もできます」という大手代理店も存在しますが、その多くが「SEO事業部」「広告事業部」といった形で採算が分かれており、成果最大化のために協力してスキームを考える…といったケースは稀です。

全体最適視点を持ったCMOが正しい判断をしないと、かけるべきでないコストをかけてしまう可能性があるのです。

代表:岸川

経験則上、マーケティングの現場を経験したことがある事業会社の執行役員(マーケティング統括)やプロダクトオーナーを経験していると、この資質を持ち合わせている可能性が高いです。

CMOに求められる役割③:マーケティング施策ごとの個別最適視点

マーケティングの優先順位やかけるべきコスト、成果指標も見えてきました。そうすると、最後に見るべきはマーケティング施策ごとにパフォーマンスが合っているかです。

もちろん、ここを広告代理店に丸投げするという手もありますが、CMOや代理店と向き合う担当者が施策について一定理解をしていないと、成果は最大化しないと考えます。

広告代理店は広告のプロであって、商品やサービスのプロではありません。広告の品質を良くし、成果を出し続けるためには、ユーザーからどのような声が出ているかをフィードバックしたり、広告の反響傾向と現場を突き合わせて仮説をブラッシュアップしていく必要があります。

CMOが現場を知らないと、例えばパフォーマンスが悪いときに、まだ静観して良いフェーズなのか、すぐにテコ入れが必要なフェーズなのかの判断がつかず、意思決定タイミングを見誤ります。

また、どのように改善をすれば成果に近づけるかの仮説も立てられなくなってしまいます。

ただし先述したように、マーケティングの施策というのは日進月歩で増えており、すべての施策を現場で動かし、精通しているという人材はほとんどいません

そのため、場合によっては外部からプロに協力してもらったり、セカンドオピニオンを入れておくことも大事です。

現在、弊社「レンタルCMO」サービスをご利用いただいているお客様の中には、施策のセカンドオピニオンとしてご活用いただいているケースもあり、「いまお付き合いのある会社さんの施策がピンと来ない。率直な意見を知りたいんだけど…」とご相談いただくことも多いです。

代表:岸川

例えば広告施策に携わっている場合でも、ディレクションだけやってました、リスティングの運用だけやっていました、という方もいるので、見極めは注意が必要です。

CMOに向いている3つの嗜好性を備えているか

ここまで、経営能力やマーケティング能力によるCMOの役割について解説してきましたが、CMOには嗜好性的な向き不向きももちろんあります。

私はCMOに向いている嗜好性は以下3つと考えています。

CMOに向いている嗜好性

①:顧客のことを考えるのが好き
②:新しい技術やアルゴリズムが好き
③:数字と向き合いながら根気よく試行錯誤するのが好き

CMO向きの嗜好性①:顧客のことを考えるのが好き

これはCMOというよりマーケター全員に持っていて欲しい嗜好性ですが、顧客について誰よりも考えられる方は向いていると言えるでしょう。

マーケティングを仕掛ける側は、どうしても自社事業に対する愛着や色眼鏡があって、顧客がどう考えているかが見えなくなってしまったり、見えても信じられなかったり…ということがあります。

企業のエゴを出せば出すほど顧客は離れ、LTVが低下してしまいます。

愛着や色眼鏡は一旦置いておいて、定性定量のデータをもとに、顧客の感情や行動を正確に分析できることが大切です。

代表:岸川

メタ認知能力に長けている方は、人の感情をを客観的に見ることに慣れているので、CMOに向いている印象です。

CMO向きの嗜好性②:新しい技術やアルゴリズムが好き

マーケティングの世界にいると、Google順位のアルゴリズム変動が2~3ヶ月に1回起き、Google広告のルールチェンジが3ヶ月に1回起き、YouTube評価のアルゴリズムは気づいたら変わっているような…みたいなことが日常茶飯事に起きます。

広告が誰かのプラットフォームを借りている以上、ルールチェンジにいち早く順応し、新しい技術はいち早くチャレンジする…というマインドがあると、嗜好性としては合っていると言えます。

また、トレンド化しそうで自社に取り入れられそうなものにアンテナを張っておく、情報収集力も必要不可欠ですね。アーリーアダプターになることで、先行者利益を得られる可能性が上がるためです。

日頃から好奇心を持ち、情報の波から光るものを選別すること自体を楽しめることが大切です。

代表:岸川

「トレンドに真っ先に乗る人はダサい…」と冷めた目で見る方もたくさんいますが、ことCMOに関しては必要な要素ということですね。

CMO向きの嗜好性③:数字と向き合いながら根気よく試行錯誤するのが好き

マーケティングではCMやホームページのバナーのように、人の感情を動かすクリエイティブな部分に注目されがちですが、それは数字(データ)をもとにした緻密な分析とPDCAによって支えられています

マーケティングは一発のインパクトの大きさではなく、中長期的な運用の積み重ねです。平たく言うと、ゲームで地道にレベル上げをしていくような作業が得意であれば、嗜好性としては合っていると言えます。

インプレッション数、クリック率、コンバージョン率、ROASなど数字に関する指標と日夜向き合うことになるため、数字に強いことも条件と言えるでしょう。

代表:岸川

やりこみ系のゲーマーは、マーケターやCMOに向いているという確信に近い感覚があります。

CMOを配置して事業を加速させよう

CMO代行としての立ち位置を求められる弊社だから感じる、CMOの意義や役割、嗜好性について記載しました。

CMOの採用や育成を目指される方、これからCMOとしてのキャリアを志向される方のお役立ちになれば幸いです。

この記事は永遠のβ版ですので、我々が活動していく中で考えたこと感じたことを随時追記していきたいと考えています。

(タイトルでは「日本一詳しく考察」と大きく出ていますが、この記事より詳しいものがあれば教えて下さい!アップデートします。笑)

本文では何度か繰り返していますが、とはいえCMOとして活躍できる資質をすべて備えた人材は稀です。

目の前の事業成長においてすぐに打ち手を出したい方、CMO機能は欲しいが1人雇うまでもない方は、手前味噌ですがレンタルCMOの無料診断にてまずはご相談ください。