ビジネス基礎講座

交渉が有利になる?ローボールテクニックとダブルバインド効果とは

あなたは相手に交渉をする時に、「承諾してほしい」「断られたくない」と思ったことはありませんか?

ビジネスにおいて相手を説得したり、交渉したりする際の、仕事相手とのやりとりはまさに心理戦といえます。

このような場面で、ローボールテクニックとダブルバインド効果を活用すれば、相手の購買意欲を誘導でき、簡単に成果を上げることができます。

本記事ではローボールテクニックとダブルバインド効果とは何か、そしてビジネスで活用する際の注意点について解説します。

好条件のあとに悪条件を伝えるローボールテクニックとは

ローボールテクニックは「ローボール」=「低い球」でキャッチボールをする様子になぞらえて名付けられています。

キャッチボールをする時、いきなり高い球を取るのは難しくても、低い球なら取りやすく、そこから徐々に高さを出していくことで、いつの間にか高い球も取れるようになりますよね。これと同じ現象が相手に条件を出して交渉を進めていく時にも起こるとされています。

例えば「店内最大70%オフ」という宣伝に釣られて入店したものの「70%オフの商品はすすべて売り切れてしまいまして…似たデザインの40%オフのものであればご用意できます」と言われた時、客としては「せっかく来たし、品切れならしょうがないか」とつい提示された商品を買いがちです。

このように最初に相手がこちらの提案や要求を受け入れるきっかけとして、魅力的な条件を提示して、そのあとに伝えにくい悪条件を出しながら交渉をすることで、相手が断りづらくなるよう誘導していく手法がローボールテクニックです。

ローボールテクニックに潜む2つの心理作用

①:人は好条件の話を肯定的に捉えやすい

客としては「定価の半額で販売」とか「送料無料」という好条件を提示されると、「それなら購入を前提に話を聞きたい」という発想になるため、話自体を肯定的に捉えてよく聞いてくれます。

しかしもし逆に、「会費を払ってメンバー登録をすれば半額」「エリアによっては送料の追加料金あり」といった悪条件を先に知っていたら客の反応はどうなるでしょうか。
ほとんどの客は「それって結局お得ではない」という思考が働き、「そういう条件なら結構です」と断る可能性が上がってしまいますし、そもそも最初から条件付きだと分かっていたら入店すらしないかもしれません。

このように同じ交渉内容でも伝える順序を間違えてしまうと、客の捉え方は真逆になり、購買率や営業成果に大きな影響を与えます。

なので「お客さんに要求を断られる」というリスクを避けるためにも、まずは商品の好条件やメリットを全面的にアピールするようにしましょう。

②:人は一貫性を保ちたいという意識が高い

人は誰しも「一貫性」を相手に求めます。さらに相手からも「この人は一貫性のある人だ」と思われたいと思っています。

一貫性とは最初から最後まで話や行動の筋が通っていることで、態度や話がコロコロ変わる一貫性の無い人は人間的に信頼性に欠けるとされています。

つまり最初は肯定的に相手の話を聞き、受け入れる姿勢を見せていた人ほど、悪い条件を提示された途端に態度を180度変えて、急に相手を拒絶するということに抵抗があるのです。

なので「今自分が態度を変えてこの話を断ることで、相手に一貫性のない人物だと思われたくない」という心理作用が働くので、はじめに魅力的な話をされたあとに多少の悪条件を提示されても断りきれない人が多いのです。

相手の一貫性の意識を揺さぶるためにも、ローボールテクニックを使って、まずは商品のメリットを十分にアピールし、「ここまで食いついておいて今さら断りづらい」「後には引けない」という状況になるように会話を持っていきましょう。

二者択一形式の問いかけをするダブルバインド効果とは

ダブルバインド効果は元々「二重拘束」という意味であり、矛盾する2つのメッセージを相手に送って混乱させるというものであったため、情報操作に関するネガティブな印象を持つ方もいますが、ビジネスにおけるダブルバインド効果はこれとは全く違う意味合いで使われます。

例えば営業や商談の際に、「この商品、いかがですか?」と聞くと「いえ、見ていただけなので結構です」と断られやすいですよね。

しかし「先程ご覧いただいた商品Aと商品B、どちらのデザインがお好みですか?」と問いかけると、相手はAとBという提示された2つの選択肢のどちらかを選ばなければいけないと思い込み、必ずどちらか一方を選んで回答します。

よく考えれば「AとBどちらも選ばずに断る」という選択肢ももちろんあるのですが、人は目の前に2つの限定された条件を提示されると、どうしてもその2つの中から1つを選びやすいのです。

これはビジネスに限らず恋愛でも応用でき、例えば意中の相手をデートに誘いたい場合に「今度食事にでも行かない?」と言うよりも「和食とイタリアン、どちらが好き?美味しいお店があるんだ」という問いかけにした方が、相手に最初から誘いを断られる可能性が低く、デートの約束を取り付けやすいのが分かるでしょう。

つまりダブルバインド効果を使って二者択一の問いかけを相手にすることで、「提示した条件をいきなり断られる」というリスクをぐっと減らせるのです。

ビジネスにおいて営業や販売の効果を上げたいのであれば、このダブルバインド効果を活用して「選択肢AとB」を考えておき、相手に選ばせるような問いかけをするように意識して交渉を進めていくと成果が変わってくるでしょう。

ローボールテクニックとダブルバインド効果をビジネスで応用する際の注意点

①:ローボールテクニックでは好条件のアピール内容の盛り過ぎは逆効果

ローボールテクニックを応用する際に、良い点をアピールしたい気持ちが強すぎて、商品のメリットや条件の良さを本来の内容以上に盛って言い過ぎてはいけません。

良いことばかり大げさにアピールし過ぎて、あとになってから「確認したらあれはダメでした」「これも対応できません」というように否定ばかりになってしまうと、客の不信感を煽るだけの結果となり、前半のアピールが台無しになるどころか、その商品は売れなくなります。

このようにローボールテクニックは多用しすぎると逆効果です。
交渉を成立させたいからと暴走せずに、的確な情報をどれだけ魅力的に相手に伝えられるかを意識して交渉しましょう。

②:ダブルバインド効果の二者択一の問いかけの使いすぎは相手のストレスになる

ダブルバインド効果を期待し、話題が変わる度に話の中で何度も二者択一を持ちかけたり、頑なにどちらか一方を選んでもらうまで話を終わらせずに粘ることは止めましょう。

選択することを強く迫りすぎると、相手は「この人は私に対して故意にどちらかを選ぶように指図し、誘導しようとしている」「追い込まれている」とストレスを感じるようになり、本来の効果は得られないどころか、あっさりと断られてしまいます。

あくまでも相手に心理的に誘導していることを悟られないように応用するのがスマートな交渉術ですので、1回の会話での使い過ぎには注意すべきです。

ローボールテクニックとダブルバインド効果を応用する際には、相手にもたらす影響をきちんと理解し、ここぞという時にうまく会話に入れ込んで使っていきましょう。

ローボールテクニックとダブルバインド効果を会話に取り入れて、成果を上げよう

ローボールテクニックとダブルバインド効果は自分の要求に対して相手からいきなり断られるリスクを減らし、良い反応や承認をもらうためにもビジネスで活用すべき交渉術です。

「いつもあと一歩のところで交渉がうまく行かない」「なぜか警戒されて断られてしまう」という場合には、会話の中にこれらのテクニックが不足しているのかもしれません。

あなたも、ローボールテクニックとダブルバインドの特性や相手に与える心理作用を正しく理解し、会話の中に自然と取り入れて、成果を上げてみてはいかがでしょうか。

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