あなたは営業時に「相手に選ばれるにはどうすれば良いのだろう」と悩んだことはありませんか?

数ある情報の中から確実に自社を選んでもらうには、ファクトフルネスと呼ばれる人間の本能を理解し、それを生かした営業手法をとるのが有効です。

ファクトフルネスを理解すれば、相手の本能を刺激して購買行動を巧みに促せますし、あなた自身も雑多な情報から思い込みにとらわれない正しい選択ができ、ビジネスチャンスを掴めるようになります

本記事ではファクトフルネスとは何か、そしてファクトフルネスを活用した営業テクニックについて紹介します。

情報に煽られる今の時代に必要な教養であるファクトフルネスとは

ファクトフルネスとは、メディアやネット上に情報が溢れていて、何が正しいのかを判断することが難しい今の時代を生きるために必要な教養であり、何かを選ぶ時の指針となるものです。

インターネット、テレビ、SNSと、必要以上に情報が入って情報過多になると、人は本能的に特定の情報だけを選んで、決めつけてしまう傾向にあります。

そこでファクトフルネスを知っておくと、SNS上の書き込みで感じる不安や、無意識の思い込みから自分を解放して、正しく冷静な判断をすることができます

これはもちろん「相手に何を選ばせるか」という視点でみると、ビジネスシーンでは営業やプレゼンにも活用できますので、正しく理解しておくことをおすすめします。

ファクトフルネスの理解に不可欠な人が持つ10の本能

ファクトフルネスを理解するには、人が生まれつき持っている10の本能を知りましょう。

「人はよりドラマチックな答えを本能的に選ぶ傾向にある」とされており、これこそが物事の見方を歪める思い込みの原因になっているのです。

ここでは人が持つ10の本能について解説します。

①:分析本能

これは「物事は何事もAとBという2つのグループに分断されている」と思い込む本能です。

思い込みの例

例えば
・世界には豊かな国と貧しい国という2つのグループがある。
・この2国の間には深くて大きい溝があり、簡単には埋まらない
という思い込みがこれにあたります。

しかし正しいデータを見ると、実際には世界の大半は貧富のちょうど中間にあり、決して分断はないのが現実です。

メディア等では国や世界情勢の違いを2項対立形式で強調しているため、貧富の差が目立っていると思い込みやすいのです。

対応策としては、見せかけの数字に惑わされないよう意識することが大切です。

②:ネガティブ本能

これは「人は物事のポジティブな面よりもネガティブな面に気付きやすい」という本能です。

誰しも戦争や災害、ウイルスなどの暗いニュースに必要以上に不安を煽られて、明るさを見出だせなくなった経験があるのではないでしょうか。

人はネガティブなニュースを耳にすると、そのニュースや対象に対して悪いイメージを定着させてしまいやすく、例えポジティブな面があったとしても、そこを見ようとしなくなってしまうのです。

対応策としては、ネガティブな状態と両立させて、ポジティブな面もしっかり考えることが大切です。

③:直線本能

これは「グラフが直線を描いていると、数値はこのまま増え続ける」と思い込む本能です。
例えば「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込みがこれにあたります。確かに今までの人口は右肩上がりですが、今後は徐々に緩やかになるというのが正解です。

実際はどんなデータも長期的に直線で右肩上がりになるケースは少なく、むしろすぐに下降して山型のグラフや、上昇と下降を繰り返したジグザグ型のグラフになることが多いのですが、人は見えないその先を想像して「今の状態がこのまま続く」と思い込んでいるのです。

対応策としては、示されていないところを勝手な思い込みで決めつけないように1度考え直すことが求められます。

④:恐怖本能

これは「本来危険ではないことを恐怖だ」と思い込む本能です。

例えば「凶悪事件のニュースを見て、いつか自分も巻き込まれるのではないか」と不安に感じることがこれにあたります。

人は実際には起こる確率が低いことを、必要以上に危険だと考えて恐怖を感じてしまう傾向があります。
本来の恐怖は危険とは異なり、あくまでも「リスクがあるように見えている」だけです。

しかしこれはとても厄介な思い込みで、一度恐怖を感じると事実を知ろうとしたり、現実を見ようとする余裕が無くなり、恐怖に脳を支配され判断力が鈍ります。

本当のリスクは「危険度」と「頻度」の掛け算で決まります。
正しい情報を選ぶためにも、危険と恐怖の違いを正しく認識して対応すると良いでしょう。

⑤:過大視本能

これは「目の前の数字が1番重要だ」と思い込む本能です。

例えば「世界のCO2の排出量はこれです」「戦争や災害による死者がこれだけ出ました」という数値に対して感じる不安がこれにあたります。

目の前に提示された1つの数を見て、「こんな数になるなんて、なんて多い(少ない)のだろう」と感じると、人はその事例だけを重視しすぎて本質を見失いがちです。

対応策としては、提示された数を鵜呑みにせずに、他の数と比較したり、割合を出してみることが必要です。

⑥:パターン化本能

これは「1つの事例が全てに当てはまる」と思い込む本能です。

例えば「アフリカの最大の問題は貧困だ」という事例を知っていると、それがアフリカのどの国にも当てはまると勘違いして理解を進めることがこれにあたります。

アフリカの貧困問題があるのは事実ですが、実際にはチュニジアは平均寿命も長く、GDPも高い暮らしをしており、本当に貧困にあえいでいるのはソマリアなのです。

このように人は無意識に物事や状況をパターン化して、本来はごく一部の例であるにもかかわらず、あたかも全体的な特徴であるかのように決めつけているのです。

パターン化は思考停止に繋がり、正しい理解を妨げる原因にもなります。

対応策としては、ひとくくりの集団の中にある違いを常に見出すように心がけることが大切です。

⑦:宿命本能

これは「あらかじめすべてのいきさつは決まっている」「今ある物事の風潮は変わらない」と思い込む本能です。

例えば「日本では女性は仕事で出世は見込めない」「昔からこうだから、これ以上どうにもならない」というように、物事が昔から変わらず今の状態であるのには理由があって、それはこれからも永遠に変わらないし、変われないという考え方がこれにあたります。

しかし実際には徐々に時代に合わせて社会や文化は少しずつ変化しています。
ただその変化は1日にして急激に起こるわけではないので気付かなかったり、実感していないだけなのです。

対応策としては、小さな変化に気付き、自分の中でその変化を受け入れて、常に情報をアップデートしておくことが必要です。

⑧:単純化本能

これは発生した問題の原因に対して、1つの対応策だけを当てはめ、それが全てだと思い込む本能です。

確かに人は過去の成功体験に固執しててしまう傾向がありますが、必ずしも全てのケースにその対応が当てはまるわけではありませんし、その1つの考え方を信じすぎて視野が狭くなってしまうと、思想に凝り固まりができてかえって危険です。

対応策としては、自分が正しいと信じて疑わない気持ちを改め、謙虚に他者からの意見を聞くなどして、ケースバイケースで対応をしていくよう心がけることが大切です。

⑨:犯人探し本能

これは何か悪いことが起きた時に、「特定の犯人(攻めるべき敵)を見つけ、そこだけを責めれば物事は解決する」と思い込み、自分ではない誰かを責めたくなる本能です。

犯人を作り、責めることに気持ちを向けていると、複雑な真実に目を向けることができなくなってしまい、正しいことに力を注げなくなるので危険です。

対応策としては、物事がうまくいかない時こそ犯人探しをするのではなく、原因をいくつも考えて、手法やシステムの見直しをすることが大切になってきます。

⑩:焦り本能

これは「今すぐ手を打たなければ、取り返しのつかないことになる」と思い込む本能です。
例えば店頭のタイムセールや、数量限定販売など、世の中には「今やらないと次はない」「今買わないと損をする」というような言い回しが多いですよね。

しかし実際には本当に今でなければダメなことは少なく、冷静になればいくらでも対応できるのですが、目の前に分かりやすい危機が迫っていると、人はどうしてもすぐに行動に移したくなるのです。

人はひとたび焦ってしまうと、他の本能についても抑えが利かない状態になり、正しい判断ができなくなるので、今回説明した10の本能の中でも特に注意し、制御しなければならない本能です。

対応策としては、目の前に危機が迫っていると感じた時こそ一呼吸おいて、自分が焦っていることに気付くことが何より重要です。冷静になって現状を分析し、取捨選択を間違わないようにしましょう。

ファクトフルネスを応用したマーケティングテクニック

①:説明時には分析本能や直線本能に、アピール時には恐怖本能に訴える

資料を提示し、商品を説明する時には、まず分析本能を活かして「この商品のパターンは、だいたいA(自社)かB(他社)しかないんですよね」と同業他社の商品との差別化を示してから、「Aならまだ良いのですが、Bだとまずいんです」とネガティブ本能に働きかけましょう。

そしてBだとなぜまずいのか、理由を説明する際に直線本能を活かして「こちらのデータをご覧ください。昨年はこれ、一昨年はこれです。ここから予測すると来年以降はこうなっていくでしょう」と伝えます。

さらに相手に向けて「Bのままだと利益が出ずに事業として成り立たなくなっていきます」とリスクを伝えて恐怖本能に訴えて自社商品であるAをアピールをしていきましょう。

段階的に相手の本能に訴えかけることで、相手の脳には「今の話を聞いた感じ、Bを選ぶと大変なことになりそうだから、どちらかといえばAだ」という認識が生まれます。

②:提案、成約に向けては宿命本能や焦り本能を刺激する

商品をアピールした後は、提案に向けてさらに相手の本能を刺激しましょう。

まずは提示したデータを元に、「市場の動向を見る限り、このままだとほとんどの会社が悪い方向に行きます」と伝え、「でもこれは裏を返せば今のうちに方向転換をすれば良いということです」と畳み掛けましょう。これは宿命本能単純化本能を応用しています。

そして「会社の経営が悪化する原因は○○ですから、それさえ排除してしまえば解決します」と犯人探し本能を刺激し、「今お話したことから、気付いた会社は既に他方向へのシフトチェンジへと動き出しています。御社も今動かないとまずいのではないでしょうか」と焦り本能に訴えかけましょう。

そうすると相手は「今この商品を選ばないとまずい」という強い危機を感じます。

こうして相手の気持ちを自社に傾くように煽ってから、最後に「そんな御社に向けて、弊社では問題解決ができるAという商品(手法)を提供できますが、いかがでしょうか」と提案し、成約に向けて話を進めていきましょう。

このようにファクトフルネスとして挙げられる10の本能を順序立てて営業やプレゼンの中で活用することで、相手の本能を巧みに刺激できれば、購買活動を促すことも容易になります。

ファクトフルネスを正しく理解、活用してビジネスチャンスを掴もう

ファクトフルネスを正しく理解することで、先入観にとらわれない冷静な対応ができます。

さらに営業テクニックとして巧みに活用すれば、相手の本能にはたらきかけて営業を有利に進めることができたり、ビジネスチャンスを逃さず掴みとることも可能です。

ぜひファクトフルネスへの理解を深めて、ビジネスシーンでも役立ててみてくださいね。