突然ですが、あなたが取っている行動は、本当にあなたの選択でしょうか?

人は自分の選択で動いていると思いながら、恐ろしいことに、「あなたの行動は他の誰かによって誘導されている」ということもあるのです。

マーケティング業界では人間の行動を誘導するために、様々な心理学的な反応を活用しています。その心理学的な反応の一つに「認知的不協和理論」というものがあります。

あなたが、マーケティング活動をする際に、人の行動を誘導できる様になりたいとお考えであれば、この心理学的な反応は強力な武器になります。ただし悪用厳禁でお願いします。

矛盾した感情を取り除こうとする「認知的不協和理論」

私たち人間は、自分の中で矛盾する「新しい事実」を突きつけられた時に「不快感」感じることがあります。

そして、人間は、その不快感をそのままの状態にしておくことを嫌い、その不快感を打ち消そうとする思考・行動を取ろうとします。

よく挙げられる例に、イソップ物語の「すっぱい葡萄」という話があります。

“あるところに、葡萄の木がありました。

そこにキツネがやってきて、見上げるとそこに美味しそうな葡萄がなっています。

ところが、キツネが頑張って葡萄を取って食べようとしても、どうしても高い場所になる葡萄の実を取ることができません。

キツネは怒りと悔しさで、「どうせこんな葡萄、酸っぱくてまずいに決まっている!」と言うセリフを吐き捨てて去っていきました。”

これが、イソップ物語の「すっぱい葡萄」です。

キツネは美味しそうな葡萄を食べたいと思って「どれだけ頑張ってもその葡萄を食べることができない」という「新しい事実」に気づきます。その不快感を打ち消すために、キツネは「葡萄はまずい」と思い込むことによって、その不快感を打ち消そうとしたのです。

日常生活の中の認知不協和理論

イソップ物語の「すっぱい葡萄」のような思考や行動の流れをとってしまうケースは私達の日常生活の中でもよくあります。

例えば、私達が購入したり愛用したりしている商品があった時に、不意にその商品の悪い噂(新しい事実)を聞いたとします。

その時、人が取る行動は2択になります。

新しい事実を聞いたときにとる行動

1、新しい事実を否定する
2、新しい事実を受け入れて自分の行動や思考を変容する

例えば、タバコやお酒などが分かりやすいでしょう。

特に気にもせずタバコを吸っている人に、

「タバコには300種類の有害物質が含まれていて、肺ガンや歯周病のリスクが上がる」
「しかも、妊娠してる奥さんの子供が早産や未熟児として生まれてきてしまうリスクも跳ね上がる。」
「また思考力も低下すると言われていて、仕事での判断能力が鈍ってビジネスの成功も遠ざかって収入が下がるというデータもある」
「そもそも、タバコの購入費だけでも10年で 約150万円も損していることになるんだ」

とあなたが伝えたとしましょう。

もしタバコを吸っている彼にとって、その情報の中で今までになかったショッキングな新事実があったとします。

すると、彼が取る行動の一つは、「その情報を否定する情報を探すこと」です。ネットで、「タバコの害がそれほど問題ではない」、「タバコを吸うことによるメリット」などと調べて、自分の行動を正当化する情報を収集したりします。

もしくは、自分の頭の中で、「あなたはホラ吹きだから信用できない、信じなくても良い」と正当化するかもしれませんね。

一方、「新しい事実を受け入れて自分の行動や思考を変容する」という行動を取る場合もあります。

あなたの伝えた言葉を信じて、なんとかタバコをやめようとしてくるかもしれません。

マーケティングに活用される「認知的不協和理論」の例

売れる書籍のタイトルに使われる「非常識な新事実」を提示する手法

有名な書籍「100円のコーラを1,000円で売る方法」などは、認知的不協和理論を取り入れることで、読者の興味関心を惹くことに成功し、いずれもAmazonのビジネス書籍ランキングで1位を獲得した本のタイトルです。

この本のタイトルには、常識とされている事実とは反する情報がタイトルに含まれています。

本来、コーラは100円程度が当たり前、それを「1,000円で売ることができる」というのは非常識な新事実です。やりたくないことも努力をするべきだと教えられてきたのに「好きなことだけして生きていく」というのも非常識ですし、本来ビジネスとは関係ないはずの「筋トレが最強のソリューション」というのも同様ですね。

これらの新事実が、自分の常識と矛盾するという不快感を感じた人は、その不快感を解消するためにより深く情報を収集してその不快感を解消とするのです。そうすることで、思わず本を手にとってしまうのです。

「顧客が抱える矛盾や不快感を取り除く情報」を提供することで、購買を仕向ける手法

健康食品やサプリメントのWEB広告で「もう食べるのを我慢しなくてもいい!食べても食べても痩せていく◯◯サプリメント!」などのようなキャッチコピーがあります。

ここには、認知的不協和理論がとりいれられています。

痩せたいからダイエットをしないといけない、でもどうしても食べるのを我慢できない…。という矛盾を抱えている人がいるとします。

上記のキャッチコピーはこの矛盾する「痩せたいからダイエットをしないといけない」「食べるのを我慢できない」という2つのことを、実は矛盾せずにどちらも両立する方法があるという解決策を提示しているのです。

人は、認知的不協和理論によって、矛盾による不快感を解消するように行動をしますから、マーケターが提示する矛盾を解決する提案に乗りやすくなるのです。

認知的不協和理論を上手くマーケティングに活用してみよう

知らず知らずのうちに、自分の行動がある方向に誘導されていると考えると恐ろしいですよね。ところが凄腕のマーケターは、これらの心理学的手法を用いて匠に人の行動を誘導しています

あなたも、誘導される側ではなく、認知的不協和理論を活用してマーケティングに活用してみてはいかがでしょうか。くれぐれも悪用厳禁でお願いします。